初恋のきた道

(THE ROAD HOME 2000.中国,アメリカ)

都会で働く青年ルオ・ユーシェンは、父の訃報を聞いてこの村に戻ってきた。母は、伝統の葬儀をすると言って周囲を困らせる。仏さんが「家路」を忘れないように、棺を担いで山を越えるというものである。そして話は過去に遡る。都会からやってきた若い教師ルオ・チャンユー(チェン・ハオ)に恋して、その想いを伝えようとする18歳の少女チャオ・ディ(チャン・ツィイー)。手作りの料理の数々に込めた少女の恋心は、やがて彼のもとへと届くのだが、当時は自由恋愛というものは珍しく、ディの祖父母も”身分が違う”と彼女を諭す。そして時代の波「文革」が押し寄せ二人は離れ
離れに。少女は町へと続く一本道で、来る日も来る日も愛する人を待ち続ける。

純粋なラブ・ストーリーでどちらかといえば目立つクライマックスも感じられないかもしれませんが、見終わった後は心あらわれるような気持ちにしてくれます。ポイントは主人公を演じるチェン・ツィイーの健気で一途な気持ち。気軽に男女が会話できる時代でなくそれが一層彼女の思いを募らせます。出会ってから始めて会話をするのがかなり後になっていて、そこに辿り着くまでの過程に共感を感じることでしょう。

私はこの映画の邦題があまりにも見事にはまっているのに感心しました。まさしくこの映画では町から続く一本の”道”が舞台となっています。

  • ディはじめ村人一同でユーシェンを迎えた”道”
  • ユーシェンと知り合うためにディが毎日待ち伏せしていた”道”
  • ディの無理矢理に町へ連れ戻されるユーシェンを懸命に追い掛け見届ける”道”
  • 旧暦の12月8日に帰るとユーシェンの言葉を信じ吹雪の中たたずむデイ、そしてひたすら見つめる”道”
  • 棺の中で眠るユーシェンと彼との思いをかみしめながら村に帰ってくるディとその”道”

映像も中国の雄大さを感じながらまた新鮮な雰囲気を感じます。現在をモノクロで過去をカラーで撮影するとは本当にグッドアイディア。しかし何よりも素晴らしいのは意図的なものを感じさせない監督チャン・イーモウの演出の素ばらしさではないでしょうか。

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